【ほぼ全文】歌あり!殺陣あり!安田章大主演『あのよこのよ』公開ゲネプロレポート

2024年4月8日(月)に東京・PARCO劇場で舞台PARCO PRODUCE 2024『あのよこのよ』が開幕。前日に公開ゲネプロと会見が行われ、主演の安田章大(SUPER EIGHT)の他、潤花、中村梅雀、青木豪(作・演出)が登壇した。

本作は、歌舞伎の新作書き下ろしや劇団四季などの大規模作品で演出を手掛けるなど、演劇界の第一線を走り続けている青木豪の新作舞台。主演の安田とは『マニアック』(2019年)以来、5年ぶり2度目のタッグとなる。

安田が演じるのは、明治初期を生きる架空の浮世絵師・刺爪秋斎(さしづめ しゅうさい)。物語の舞台は江戸の幕末から大転換期を迎えた明治黎明期で、秋斎と彼を取り巻く人々が、ひょんなことから事件に巻き込まれ珍道中に繰り出すことに。先行き不透明なご時世に地に足が着かない人々が戸惑い彷徨うさまを、ユーモアや笑い、音楽を織り交ぜながら爽快感のあるエンターテインメントとして描く。

共演には、昨年宝塚歌劇団を退団したばかりで今後の活躍が期待される元トップ娘役の潤花、先日2月2日に発表された第31回読売演劇大賞で最優秀女優賞を受賞しあらゆる作品でその存在感を放つ池谷のぶえ、映像作品を中心に活躍し近年では舞台にも精力的に出演する落合モトキ。
さらに、大窪人衛、村木仁、南誉士広、三浦拓真、とクセの強い実力派俳優陣が顔を揃え、市川しんぺー、中村梅雀、と物語の土台を支えるベテラン俳優も結集した。

物語は、刺爪秋斎(安田)が明治新政府を批判したとして捕えられる、激しい殺陣のシーンから始まる。秋斎は初犯のために解放されるのだが、居酒屋で弟の喜三郎(大窪人衛)から出所祝いの眼鏡をプレゼントされたところで事件に巻き込まれ・・・

江戸から明治へ時代が変わる中で、その変化の渦に自分の行く先がおぼつかなくなっている登場人物たちの姿は、コロナ禍や世界情勢の影響を受け漠然とした不安感の中に居る現代の我々に重なる。

舞台の上で登場人物たちがそれぞれ抱えている現実は優しくはないが、青木はそれを悲劇ではなく爽快なエンターテインメントとして描く。作中に散りばめられた殺陣のシーンでは、手練れの役者たちが対峙する気迫がすさまじく、鮮やかな立ち回りに一秒も目が離せない。

そして、安田演じる秋斎の軽やかな歌声で奏でられる音楽は、本作の大きな柱。秋斎が浮世絵師としての業を心に抱きながら「あのよ」や「このよ」に漂うさまを安田は軽妙に歌い上げ、観客を不思議と晴れやかで明るい気持ちに導いてくれる。
是非、劇場で音楽も楽しみにその空間を体感してほしい。

会見には安田、潤、梅雀、青木が登壇し、初日に向けての意気込みや稽古場での様子を語った。
(以下コメントほぼ全文)

――初日を迎える今の心境や意気込みをお願いします。

安田 コロナ禍が長く続きましたので、そこを経て、今改めて演劇というものが皆さまの心に近付いている時代になったのかなと思います。ただただ来ていただいて、席に座って頭を空にしていただける時間を提供できたらなと思い、今回はみんなで力を合わせてエンターテインメントを作った次第です。なので、楽しみです。

 初めましての皆さまと一ヶ月ほど心をいっぱい通わせて、心をいっぱい動かして形になったものが、明日お客様とお会いしてどう変化して、どんな幕開けになるのか、私自身もとっても楽しみにしております。

梅雀 私は今まで舞台ではやったことのない種類の役を演じております。初っ端から奇想天外、予想を遥かに裏切る登場の仕方をしております。その「えぇっ!」というのを見せられるので、本当にお客さんの反応が楽しみです。

青木 お芝居はやっぱりお客さんに育てられてどんどん良くなるものなので、始まってお客さんの笑い声や涙に支えられて、どんどんこのお芝居が進化していけばいいなと思っています。

――ご自身が演じる役の見どころやお気に入りのシーン、稽古中に印象に残ったエピソードを教えてください。

安田 (青木さんが)安田章大というキャラクターに、秋斎を当て書いてくれたんですよね。「ヤスが居ることでポジティブになれたり、前向きになる」っていうところにエネルギーを置いてくださったんだなと実感していまして。あぁ、ありがたい自分の使い方をしてくれているなと思っていると同時に、稽古を踏んでいくと、秋斎というのはかなりせっかちでして。豪さんそっくりなんだな、みたいな役です(笑)。でも、「あれ、これ意外と僕やなぁ?」っていうところもあったり、人がいっぱい混ざり合った、人の癖っていうのがちゃんと出てくるんで、それが今回のエンターテインメント性にも詰まってるのかな。そこが秋斎というキャラクターとして稽古を踏んでいく上で、面白かったですね。

 私自身はミツのような役は初めて生きるなという風に感じておりまして、いろんなものを抱えながらも生きる情熱に溢れた魅力的な女性だと感じています。秋斎さんと二人の場面があるんですが、その場面でのミツが良い意味で力が入っていなくて、色々そぎ落とされて本心の部分が出ていたりとか。それはきっと秋斎さんが居ることで引き出していただいて。そして私自身も共鳴し合えるような、そんな場面にしたいなと思いながら演じております。また、お客様が入って新たな感情が流れると思うので、そこをちゃんと緊張しながらミツを生きていきたいなと思っております。

梅雀 珍しくとても悪い役なんですけれども、メッセージ性をすごく含んでいて、どこかの国をずっと支配してきた権力の象徴みたいな存在で。ラストにメッセージを叫んでいますので・・・それがどういう風になるかなっていう話ですね。

――青木さんから見た御三方の印象を教えてください。

青木 皆さん本当に引っ張っていってくれます。ただ、(安田は)エレベーターに乗ってボタンを押し忘れてそのままずっといる。

安田 押さない。

青木 押さない。僕の場合は乗ったらもう階を押すより早く締まるボタンをして、早押しクイズかってくらいものすごい勢いで押すので。そこが(青木と安田の)せっかちとおっとりの差ではないかなと思ってまして(笑)。だから稽古場でもヤスはポーッとしながら芝居全体の空気を見ていて、「豪さん、こここういう風にやったらええ?」みたいな感じで。僕はとにかく「巻いて巻いて!」とか言ってて、そこは随分違うんだなと思ってるんですけど(笑)。やっぱり彼が中心に居てくれることでこの場がすごく良くなってると思うので、芝居にもそれが現れるといいなという風に思っております。
潤花さんはね、とにかく明るいんですよ。稽古場でずっと笑っててくださって。今一番心配なのは、これがいざ初日が始まった時、誰も笑わなかったらどうしようと思ってて。 潤花さんが客席にあと2人くらい居てくれると良いんですけど(笑)。

安田 そんならもう、そっちに座ろう!

(一同笑い)

青木 本当、みんなをとにかくいつも素敵に導いてくれてるなと思っておりました。
梅雀さんは、親戚に1人居てほしいお兄さん、ていう感じ。すごくみんなと遊んでくれるっていう感じで、共演の若手の男の子の所作や刀の扱い方とか、そういうところをちょっと行って、決して先輩ぶらずにとても楽しく教えてくださって。本当にいつもみんなと楽しく遊んでくれる方だなと思って(笑)。

安田 若いですよね!

梅雀 幼い(笑)。

安田 最高じゃないですか。最年長の方がそう居てくださるのって、一番(最高)。

青木 そうだよね。あと、ヤスも久しぶりの殺陣のある芝居で。

安田 そうですよね。

梅雀 僕も、久しぶりに舞台で殺陣です。しかも、明治初期の邏卒という役は初めてです。

青木 方言がすごく難しい。

中村 昔の薩摩弁で、非常に癖っぽくて苦戦しました。

青木 全然、最初から出来てましたよ(笑)。あとはヤスもダンスとか出来るし、潤花さんも所作とかばっちりなので、皆さん覚えが早くてあっという間にすぐ出来るので、早い段階で僕は楽しんで見ていました。

――御三方は青木さんの演出で新鮮に思ったことなどはありますか?

安田 豪さんは、最初は様子を見ながらなんとなくみんなに置いてもらう感じなんですけど、全部自分の中で決まってるなっていうのは改めて実感しました。こう演出をしたい、こういう音が鳴ってほしい、こういうテンポ感でいってほしい、全てにおいてちゃんと自分なりのプランがあって、その上で役者さんがやってくれることをよーく考えつつ台本を書いてるんだなっていうのを、今回ご一緒させていただいて感じました。で、曲げられないこと、自分が心の中でちゃんと思ってることは本当に真摯に時間をかけて追求していく。そこが5年前よりも、より輪郭がはっきりとしました。僕に対しても、5年前はなんか気を遣ってたんやなぁと思います。

青木 いやいや(笑)。

安田 今回は今まで出来てなかった部分をもう一度足し算して、って出来るようにしてくれてるんだなってことも感じましたし、その分豪さんに対して自分がはずせないことは逆に質問もしました。そういう心と心のやりとりを、演出家だからとか俳優だからとか関係なく、人と人がちゃんと会話をするということを、今回の現場で改めて根源的に考えました。

 安田さんもおっしゃっていましたけれども、今回一番感じたのは、青木さんが作られてる現場の空気感と言いますか、「みんなで作っている」と常におっしゃっていて。皆さんが同じ方向を見てそれぞれ真摯に向き合っていて、毎日の稽古場で「あっ、この瞬間が宝物だ」って思う瞬間が私の中で本当に詰まっておりまして。こういう方々に出会えて、この素敵な作品に出会える時間って本当に貴重だなと毎日思っています。なので明日の初日も楽しみです。

梅雀 すごく奇想天外な、でもしっかりした筋の芯がずっと通っていて、しかもそれを途中で飽きさせないびっくりさせる展開がすごくたくさん散りばめられていて、それを毎回稽古のたびに思いつかれて、「ここ、こうやってみて!違うかな?もう一回!もう一回!もう一回いいですか?」って。好きなんだなぁ〜、と。でもそのほんの0.何秒の差にすごくこだわっている。その独特の世界は確固としてあるんだな、とすごく感じました。

――安田さんは今回久しぶりの殺陣はいかがでしたか?

安田 男の子って(殺陣が)好きなんだな、っていう実感はありました(笑)。幼少期から遊んで立ち回りとかしてたから。自分自身が楽しくて仕方がないなっていう思いを掻き立てられました。でも殺陣をつけてくださる方によって型が違ったりとか、絶対あると思うので、僕が経験したことのないちゃんとした形で一から学ばさせていただきました。

――潤花さんから見て、座長としての安田さんはいかがでしたか?

 初めての環境だったので、すごく緊張もあって。初めての稽古が安田さんとの二人のシーンで、緊張するかなって思っていたんですけれども、安田さんと青木さんお二方のお人柄のおかげで変な緊張もなく、お芝居に真っすぐ集中できました。人としても芸事に関してもたくさん学ばせていただいたので・・・ありがとうございます。

安田 どういたしまして(笑)。

(一同笑い)

――具体的にかけられた言葉はありますか?

 たくさんあるんですけれども、やっぱり常に相手とのコミュニケーションを大切にされている方で、一日の始めの「おはようございます」から始まって、お芝居の役を生きる上ですごく大切なものだなと改めて感じました。一言ひとこと、言ってくださる言葉に温かみがすごくあるので、だからこそ物多くを学べるんだなと思いましたし、こうして皆さんが一つになる感覚を私も感じるんだなと思いました。

――梅雀さんから見て、座長としての安田さんはいかがでしたか?

梅雀 座頭としてみんなの一体感を高めるということと、繊細に色々感じて、それに反応しながら、でもすぐに言葉にしないでなんとかするために空気感を作ってって、っていうのがちゃんと身に付いていらっしゃって、大したもんだなと。結構、見てるところが(僕と)近かった。(僕が)「あっ」て思ったら(安田も)「あっ」みたいな。

安田 (笑)

梅雀 で、ちょっと気になったらちょっと相談してみて。そういう、稽古場でどうしたらいいかっていうのをノウハウをちゃんと経験してきてるなって。

――安田さんの役は当て書きということですが、青木さんが安田さんに持っている印象を教えてください。

青木 今回の役は、安田くんのある部分をうんと誇張していると思うんですね。周りをどんどん翻弄して自分のペースに巻き込んでいくっていう役なんですけど、実際一緒に居ると、安田くんはむしろおっとりと周りを自分のペースにまとめる人なのかなと。

安田 自分の人生の半分くらい命使ってんちゃうかなくらいの速度で。こんな一気に喋れないなっていう(笑)。

青木 稽古の最初の頃よりスピードがすんごい上がったよね。もっと速く、もっと速く!って言って。最初に僕が考えていたイメージとはだいぶ違ったんじゃないかなって感じですね。

安田 っていうことですよね。

――安田さんは演じてみていかがでしょうか。

安田 自分の私生活の速度はもうとにかく外に捨てといて、この世界を楽しんでもらいたいので。ここの世界を自分たちで意識するっていうのは、みんなで一緒に大きなものを作っていくっていう意味では、やっぱり僕の独り相撲じゃないなっていう風に感じて、それが楽しいんですよ、演劇って。皆さんがそれぞれの目を使ってクローズアップして観るっていうのは、やっぱりみんなで空気を作るからこそ出来ることであって。

青木 さっき、5年前は気を遣ってたんじゃないかって安田くんが言ってくれたんですけど、この5年間で彼の舞台を観に行ったりとか、連絡したりとかして、長い時間をかけることでお互いに「あっこの言葉は共有できているな」ってところが出てきて。稽古場でも前の作品よりも色んなことが言えるようになったとか、そういう共通言語を持てるようになったんじゃないかなと思います。

安田 ぶつかり合って体験して、また混ざり合った共通言語を持てたのかもしれませんね。

――今回は眼鏡もキーアイテムになるんでしょうか。

安田 そうなんですよ。上手にやってくださったんですよ。体のこと大事だよっていうことを本当に考えてくださって。明治初期の時代に色眼鏡みたいなものってどうだったのか?みたいなことから。

青木 新たに作った小道具です。

安田 レンズが特注なので、今回改めて作り直してくれていて。

青木 スタッフさんが色んな微調整をしてちょうど良いのを作ってくれたので。だから安心してずっと舞台に立ってもらえるんじゃないかなと思ってます。

――SUPER EIGHTのメンバーは観劇に来られそうですか?

安田 そうですね、来てくれるんじゃないですか? だって、SUPERになったんですから。(一同笑い)SUPERの気持ちを持ってますからね。

――最後に安田さんから、公演を楽しみにしている皆さまへメッセージをお願いします。

安田 4月8日からスタートしますが、舞台上では色んな役者さんが、そして舞台裏では色んな部署の方々が、一丸となって物語を紡いでいます。現場で起きているこのリアルな状況を、ぜひあなたの肌を使って、五感を使って、感じに来ていただけたらなと思います。なのに、エンターテインメント。そこが楽しみでございます。ぜひお越しください。ありがとうございます。

二度目のタッグとなる安田と青木だが、二人が阿吽の呼吸でお互いの意図を理解し合っていることが伝わってくる会見だった。
舞台PARCO PRODUCE 2024『あのよこのよ』は4月29日(月・祝)まで東京・PARCO劇場、5月3日(金・祝)から10日(金)まで大阪・東大阪市文化創造館 Dream House 大ホールで上演。上演時間は約1時間50分(休憩なし)を予定している。

(取材・文・撮影/Encore!編集部)


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あらすじ

舞台は明治初期。
浮世絵師・刺爪秋斎(安田章大)は、新政府を批判したとして番屋に入れられていたが、初犯ということもあり解放され、迎えに来た弟の喜三郎と、居酒屋で宴を共にしていた。
そこで秋斎は喜三郎から出所祝いとして眼鏡をプレゼントされ喜んでかける。
さらに秋斎は居酒屋に居合わせた、未来が見えるという能力のある常連・フサに占ってもらうと、「女に出会う」と告げられる。「その女が秋斎の未来を決めるだろう」と。
そこに美しい女が男と共にやってくる。秋斎が出会う女性は彼女なのではないかと話していると、突如、刀や銃を持った男たちが現れる。そして男たちは秋斎たちに襲いかかって来るのだった・・・・・・。

公演情報

あのよこのよ

作・演出:青木豪

出演:
安田章大
潤花 池谷のぶえ 落合モトキ 大窪人衛 村木仁 南誉士広 三浦拓真
市川しんぺー 中村梅雀 他

【東京公演】
日程:2024年4月8日(月)〜29日(月・祝)
会場:PARCO劇場

【大阪公演】
日程:2024年5月3日(金・祝)~10日(金)
会場:東大阪市文化創造館 Dream House 大ホール

公式サイト:https://stage.parco.jp/program/anoyokonoyo
公式ハッシュタグ:#あのよこのよ

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